「新しいアートのフォーマット ― ハイブリッド・エディション,ブロックチェーン(NFT)と物理世界 | Goh」
2021年に追記-アートとNFTの真実 この記事は2019年に英語のみで公開したもので,新しいアートフォーマットを作って販売する際にリスクなどもまとめて発信することを目的としたものです.それをそのまま日本語にしたので記事内に「販売しています」等の記述がありますが,現在は販売していません. 19年の当時に僕が作ったのは,NFT が含まれるハイブリッド・エディションという作品形式です.それは NFT のみに特化したものではなかったのですが,今 NFT が話題のわりにアート関係ではまともな情報がほとんどないことや,元記事の公開から 2年が経っていて良い機会ですし,NFT 周りの事を追記して振り返ることにしました.2021年の今では NFT の状況も変わってはいますが,根本的な問題は変わっておらず,むしろ問題を誤解して偽の解決策や誇大広告を喧伝する人が増えて,収拾がつかなくなっている印象です. 本題に入る前に,最低限の基礎知識だけ説明しておきます.この記事での NFT というのは,ブロックチェーン上で発行する「画像作品などのデータを紐付けたトークン」のことです.トークンは,作り方次第で電子コインやチケットや証券などになれるような汎用的な証票(証書)のことで,それと紐づける作品データは画像でも動画でも音でも文字でもスクリプトでも何でも構いません(何とも紐づけない NFT もつくれます).初めての人向けに正確ではない印象重視の説明をすると, まずトークンを電子コインだと想像してください.次に,一枚の電子コインに「どこかのサーバー上に置いた画像データの URL 」を書き込みます.電子コインと画像はリンクしていて,コインの保有者を画像の正規の保有者とみなすことにします.画像データは普通にコピーできますが,ブロックチェーン上で発行された電子コインは,Bitcoinなどのようにコピーして使えないようにつくられていますから,画像の正規の保有者を制限できます.次に,電子コインにはネット上に専用のマーケットプレイスが用意されていて,そこでオークションで売買したり取引ができます.自分の電子コインは,スマホの財布アプリで管理できて,友達に送ったり, 自分用にコレクションしたりできます.ここでの電子コイン(トークン)は,作品の画像データの取引を便利にするための媒体といえます.たとえば他の媒体では, USBメモリに画像データを入れて油性ペンでサインして,それを手渡しなり郵送するなりで取引することもできます.電子コイン形式にすると,オンライン取引や財布アプリなどが使えて便利になるという利点があります.一方で,その裏にはいくつもの欠陥と嘘があります. NFT(Non-Fungible Token)とは,そうした用途で使えるトークンの種類の一つです.Non-Fungible(非代替性)という意味は誤解と実態を伴わない言葉の一人歩きが多いので,一旦置いておきましょう.NFT の役割や用途は他にも色々とありますが,この記事では「デジタルアート作品とその取引に使える仕組みとしての NFT 」に絞って書きます.(これ以降,全てのことを噛み砕いて説明は出来ないので,分からない部分は読み飛ばしてください) NFT には作品コンテンツへの URL が書かれているだけでコンテンツの消失や改竄が起こり得ることや,アートの資産としての寿命が短いであろうこと,同一作品の重複発行などの不正が出来ること,NFT と物品作品の統合が短期的な解になるかもしれないことなどは,2019年の当時に調べた限りでは他に指摘しているものは無かったので,僕のこの記事が最初のはずです.(英語圏と日本語圏では. 元記事は簡易なものでしたが,今の NFT をめぐる混乱の中で僕の見解は価値のあるものなので,日本語版も書くことにしました.そしてついでにこの追記も書くことにしました.この追記は元記事を読まれた人向けですので,まだの人はこの下の記事本文から読んでみてください. これを誰が書いてるのか,書かれたことは確かなのかは,僕(アーティストのGoh)の過去の仕事の書籍や作品なども調べて判断してみてください.僕よりもこの領域で実績と理解のあるアーティストは(少なくとも日本語圏では確実に)いないと思います. *記事を読んで価値があれば,SNSでのシェアはぜひお願いします.多様な見解や,資本力により支配的となる誇大広告に隠れた実態を明らかにするためには,独立したジャーナリズムが必要です.有料で販売したい内容をこうして無料で公開できるのは,支援してくれる人たちのおかけです.ありがとう.(下の「支援するボタン」からコーヒーをおごってくれたら最高です.いつかリアルで飲みながらお話ししましょう☕️) *出典は原文が参照できるようにこのページのリンクも載せてください https://twitter.com/ghuzmi/status/1173980661083856896 アートにおける NFT ブロックチェーンのためにあるアート ◆大まかな流れ 冒頭で,僕が2019年に記事を出した時には,NFTの構造的な問題への指摘はほとんど見つけられなかったと書きました.NFT は 19年より前からあったにもかかわらずクリティカルな指摘がそこまで遅かった理由は,アート作品における NFT の核心的な問題が「アート制作とブロックチェイン技術の両方を知っていて,かつ自分でスマートコントラクトを書いて発行から運用までシステムを動かせないと分からないこと」だからです.この問題把握の難しさに起因した NFT 黎明期の批評性の欠落が,後の誇大広告支配の歴史への進路を定めた一因だろうと思います.(スマートコントラクト(以降コントラクト)とは,ブロックチェーン上で動くプログラムです.この場合は,プログラムでトークンの発行量を決めたり持ち主の変更などを処理して,NFT としての機能を実現します.現在に主流となっているアート作品利用での NFT は,プログラム内に「外部にある作品データへのリンクを含めた『メタデータ』」を書き込むことで,トークンと作品を紐づけたとみなします.) 19年には既に,アート向けのものや OpenSea…
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2022-01-04 17:01:00